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中古車輸出の基礎知識

どんな車が海外に輸出されているのか(前編)-輸入規制、関税、取引条件の違いで輸出される中古車の条件が決まる

更新日:

2017年の輸出台数見込み

 2008年9月のリーマンショックで輸出台数が大きく減少したのを底に、その後の中古車輸出台数は下記の様に回復基調にあります。
 2017年は全体で120万台を超えてくる事が予測され、約10年前の水準まで回復してきています。


中古車輸出台数の推移

2008年2009年2010年2011年2012年2013年2014年2015年2016年2017年
1,347,026675,858838,401857,7791,004,8451,163,1091,283,3901,254,0471,187,7101,272,356
出典:日本中古車輸出業協同組合(2017年は当社予測)

中古車輸出台数の推移グラフ



 全体統計だけではわかりませんが、実は同じ120万台の輸出でも、年によって、輸出台数の国別の内訳は大きく変化しています。

 その理由は、リーマンショックの様な全世界的な不況を除けば、輸入国側の規制や関税の変更が主な理由です。これらは、日本の常識では考えられないくらい、突然コロコロ変更されます。

 いくら中古車を輸入したいニーズがあっても、輸入規制や関税がユーザーに不利なように変更になっては、輸出台数は伸びません。その辺りが、中古車輸出業者の皆さんがご苦労されているところで、この輸出ビジネスが難しいポイントです。

 メインで販売している国の規制や関税変更があるたびに、カーディールページのスタッフも、加盟店様と苦労をともにさせていただき、日々結束を強くしております(笑)。


では、輸出台数上位30カ国の、年間推移をみてみましょう。

順位地域国名2013年2014年2015年2016年2017年
予測
1アジアアラブ首長国連邦98,831112,636136,180 151,001 148,734
2太平洋ニュージーランド91,322110,333 118,416122,329139,626
3アジアミャンマー134,681160,437141,087124,212107,050
4南アメリカチリ78,00073,36464,65474,069 100,094
5アジアパキスタン28,78538,22849,48156,95274,162
6アフリカケニア61,39667,05977,45757,13072,594
7アフリカ南アフリカ共和国62,27553,54046,49848,10060,740
8ヨーロッパロシア167,822128,31249,14248,24454,296
9アジアモンゴル34,91935,36731,68332,17944,338
10アジアフィリピン25,22827,87033,98236,21742,256
11アフリカタンザニア30,91237,34342,75239,40841,834
12アジアバングラデシュ13,03319,77029,18932,55635,094
13アジアスリランカ18,20934,24359,33824,34234,262
14北アメリカジャマイカ10,80110,34716,79322,93931,550
15アフリカウガンダ27,69527,21722,62521,63227,450
16アジアマレーシア27,83727,31222,54121,620 19,136
17アジアグルジア18,21738,75929,51937,769 13,554
18アジアシンガポール2,2014,68417,45425,328 11,322
19アジアアフガニスタン7,1358881,92610,71110,984
20アジア香港8,2169,72711,1418,65810,464
21ヨーロッパキプロス3,1295,7688,0038,674 9,598
22アジアタイ8,2939,28511,1275,5439,350
23アフリカボツワナ7,47710,33612,01710,016 9,338
24アフリカモザンビーク16,50323,21420,9728,3589,208
25アフリカモーリシャス6,7806,3916,9607,1297,770
26北アメリカトリニダード・トバゴ15,31014,59919,2669,2477,698
27アフリカザンビア22,73920,80013,4835,893 7,272
28南アメリカスリナム13,72312,60614,4424,5906,598
29北アメリカバハマ2,9543,8096,5275,6546,462
30ヨーロッパ英国2,6614,3508,0967,0596,238
出典:日本中古車輸出業協同組合

 ロシアやスリランカなどの乱高下をみていると、規制変更で困った当時の記憶が、昨日のことのように思い出されます(泣)。

 この数年の傾向を見てみると、アラブ首長国連邦(UAE)、ニュージーランド、フィリピン、シンガポールは増加傾向にあります。逆に、ミャンマーやロシアなどは減少傾向です。

 面白いのは、どこかの国への輸出台数が減少しても、その減少を補てんする国が現れるため、中古車輸出総台数はあまり変わらないことです。

 例えば、プリウスの購入価格が一番高いA国があったとします。この国は、プリウスに対してマーケットリーダーとなっています。

 しかし、突然そのA国の規制や関税等が変更されてA国のユーザーが購入することが難しくなったとしても、いままでプリウスの購入価格が2番手だった高い国B国のユーザーが買っていく、という具合です。

 そもそも日本のユーザーは過走行や古い年式の車を嫌うので、この輸出されているプリウスはそこまで高い価格で日本国内に流通しません。したがってA国が買わなくなっても、まだまだ日本の相場より高い価格で購入するB国が買っていくという構図になっています。

 もちろん規制や関税がユーザーに有利な方に変更されて、さらに高い値段をつけてくるC国が出現するケースもあります。

 このように、日本で人気の無くなってしまった中古車が輸出されているため、規制変更によって輸出される国や価格は変動がありうるものの、全体の輸出台数は一定に近い水準に保たれるのではないかと考えられます。



各国の輸入規制にはどのようなものがあるのか

 この質問は色々な方々からよく質問されますので簡単に説明させていただきます。
 大きく分けると「輸入規制」には、下記の4つがあります。

  • 年式規制
  • ハンドル規制
  • 車両のスペック規制
  • 中古車の輸入禁止

 年式規制はさまざまな国で定められていますが、どの国も主に初年度登録から7年、5年、または3年以内のいずれかであることが多いです。中にはマレーシアの様に初年度登録から1年経過し、かつ5年以内の車のみ輸入可能という国もあります。

 また、初年度登録「月」だけでなく「日」まで厳密に定める国や、規制内の年式でも、車種や年式、登録月によって関税が違うケースもあります。それによって売価が変わりますので、中古車輸出をする場合は、国ごとの年式規制を熟知する必要があります。

 逆にいうと、同じ国でも車種や年式によって関税が安くなるため「売りやすい」というスキマの車もあります。中古車輸出をされる方はスキママニアになる必要があります。
 また、国内で中古車買取業をされている方も、これらの輸入規制、関税を熟知していると、買取価格の精度があがるかもしれません。

 つぎに、車種のスペック規制は、車になんらかの装備がついていないと輸入禁止というものです。

 例えば、ロシアの様な緊急時の位置通報機器や、ニュージーランドの様な横滑り防止装置が付いている事などが義務付けられている場合があります。
 またハンドル規制は、中国などの様に、右ハンドル車が輸入禁止という国があります。



輸入規制以外のルールってどのようなものがあるのか

 輸入規制以外のルールには、大きく分けると下記2つのパターンがあります。

  • 現地での車両登録に条件がある場合
  • 輸出前に定められた輸出前検査を行わないと登録できない場合

 たとえばニュージーランドの様に、大きな修復歴があったり、サビなどにより車両状態が悪いため、現地の基準に合格しないものは、到着後、現地での修理に多大なコストが掛かるケースや、JEVICやQISJなど輸入国側が定めた輸出検査に合格した証書がないと、現地で登録できないという様なケースもあります。

 年式規制がある国には比較的新しい車両が輸出されている為、車両状態が粗悪な車の割合が少ないようですが、年式規制が無く、古めの車両を輸入する国は、車両状態に関するルールを定める国が多いようです。

 確かに、粗悪な車ばかり輸入されては、現地の人々の命にも危険がありますからね。

なぜ、輸入規制などのルールが定められるのか

 輸入規制などのルールが定められる背景には、

  • 国の税収を増やしたい
  • 質の悪い中古車を流通させたくない
  • 輸入国で作られる新車の販売を促進したい
  • 選挙の道具として関税を利用したい


  • があげられます。規制や関税、ルールの変更のたびに、背景には色々な思惑かあるのだなと考えてしまいますね。

    こういった規制変更の情報は、自社のみでは、なかなか正確に取れない事がありますが、
    日本中古車輸出業協同組合や、当社カーディールページの様なところに加盟されると、情報を得る事ができる可能性は広がります。(当社は日本中古車輸出業協同組合の一員です)

    「国内向け」と「輸出向け」車両の見極め方

     日本国内のユーザーが購入する車両価格より、海外ユーザーが購入する価格の方が高い場合に輸出される。

    当たり前ですよね(笑)

    輸出される車をもう少し場合分けしてみると、

    • 現地で販売されているモデルより、日本で販売されているモデルの方が高スペックなので、多少高くても欲しいというケース。
      ヴェルファイアなど、新しい高級な車が輸出される国です。
    • 年式が古くなったり走行距離が多いため、日本のユーザーが購入しない車両を安く購入したいケース
    • 車両状態が悪いため日本で修理すると高くつく車両が、海外で修理すると人件費やパーツが安いのでバリューが出るケース
    • となります。
      日本より海外のニーズが高いものが輸出されています。



      中古車輸出の最大の難題。代金回収

       中古車輸出業者なら誰しもご理解いただけると思いますが、中古車輸出において一番頭を痛めることは「代金回収」です。

      中古車輸出の主な支払い条件には、

      • (掛売り)現地到着後、事前に定めた一定期間の間に支払う(主に60日、90日)
      • (掛売り)出港後、現地到着前までに全額支払う
      • (掛売り)出港前に50%を支払い、出港後残りの50%を現地到着前までに支払う
      • 出港前に100%全額を支払う

      があります。

       現地の業者にBtoB販売する場合は、上記の①~③の様に掛売りになることがほとんどです。

       特に前金なしで出港してしまう場合は、デフォルトリスクが伴いますので、信用できる業者に販売する必要があります。

       中古車輸出を始める時に英語力を心配される方もいらっしゃいますが、片言の英語でも車両を売るだけなら比較的簡単です。

       BtoBの場合は、「Toyota Harrier / 2008 model / 80,000km / Price is○○yen.」と車のスペックと価格を伝えれば、相手国の方がプロのなので、なんとなくわかってくれるものです(笑)

       実際、英語以上に重要なのは代金回収で、商談が進み、成約となり、InvoiceやSales Contractを発行して売れた気になっても、全く支払ってこないなんて事はざらにあります。怖いですね。
       
       代金回収できずに大きく損を出してしまう輸出業者は跡を絶ちませんので、輸出ビジネスをスタートしたばかりの方は、特に注意していただきたいポイントです。
       海外のバイヤーは、たとえ契約書を交わしても、期日通りに支払ってこない場合が非常に多いです。


       経験的にですが、年式によって2つの取引条件に分かれます。

      1.初年度登録から7年以内の車を輸入するような国は、BtoBで業者に販売するのが主流です。したがって掛売りになり、出港前に全額回収できる安全な取引国は、ほぼありません。これらの国は代金回収に苦労する場合多いです。

      2.初年度登録から8年以上の古い車を輸入する国は、個人のバイヤーやブローカーに直接販売していくのが主流です。したがって100%前金で回収できる国が多くなります。

       これらの国は、在庫をWEBサイトで販売するのが主流ですので、在庫リスクはありますが、車両価格もかなり安価になってきますし、回収不能に陥ってしまう事はありません。

       このように、中古車輸出の支払い条件は、初年度登録から7年で掛売りと、前金の2つの種類に分かれるイメージになっています。


      以上の様に、輸入国の規制、関税、取引条件の違いで輸出される中古車の条件が変わります。

      輸出で利益を出すには、各国の状況を熟知する必要があります。

      次回は、具体的に「アフリカ諸国に売れる中古車」の条件をお伝えしていきたいと思います。

      どんな車が海外に輸出されているのか(後編)-アフリカに売れている車を知る

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