前回まで、想定粗利ルールと在庫構成ルールを決めることで、戦略的に在庫をそろえる方法をお伝えいたしました。
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しかしながら現実的には、全ての在庫が想定通りの粗利で売れるわけではありません。
中には、売れ残ってしまう車両もあるでしょう。
今回は、仕入れた在庫を、どうやって売り切っていけばいいのかをお伝えします。
「在庫販売は若干損が出るものと理解する」
ズバリ最初に理解しなければならないのはこの概念です。例えばコンビニのお弁当や、国内の車両販売でも同じことが言えます。
在庫の売れ行きは、相場や為替の変動、販売先国の状況など様々な要因で変化します。
また、個車単位のスペックや装備品などでも売れ行きは変わります。
中には、なぜ売れないのかわからないという永遠の課題も出てきますし、赤字で売らなければならない車も出てきます。
したがって在庫型ビジネスでは、想定粗利をとって販売する在庫に、赤字で処分する在庫が数%混ざって、グロスで利益を出すというのが通常のスタイルになります。
つまり売れない在庫をいかに戦略的に処分し、ロスを最小限に抑えていくかが、総粗利を最大化するための大事なポイントです。
「どうしたら総粗利を最大化できるのか」
販売開始後、一定期間引き合いがない車両は値下げをして売り切っていく必要があります。
想定粗利の確保にこだわり、値下げをせず、最初の値付けで長期間販売する方もいますが、一定期間経過しても引き合いがない車は、ユーザーのニーズと価格がマッチしていません。
早めに値下げ、処分していきましょう。
それでは、値下げをしないケースと、適切に値下げや損切りをするケースの違いを見てみましょう。
図1は値下げや処分をしないケースです。売れ残り車両がだんだん増えていき、回転している資金も減るため、販売台数が落ちていきます。それにより、同じ資金から得られる総粗利も少なくなってしまい、資金効率が悪い状態です。
それに対して、図2では、日々適切に値下げや処分をしているので、台粗利自体はやや少なくなりますが、販売台数は落ちないため、総粗利が図1に比べると大きくなります。
資金を無駄なく回転させている状態です。
このように、赤字販売をするのはとてもつらいですが、1台1台の黒字にこだわり過ぎると、ビジネス全体の総粗利を大きく損なってしまいます。
一定期間経過しても引き合いがない、売れない在庫は、思い切って利益を削りつつ、全体的な在庫回転率を上げていくことが、非常に重要な要素となります。
「在庫処分ルールを決める」
それでは、具体的にどんなルールで処分していけばいいのでしょうか。
資金量、各社の状況にもよりますが、ここでは基本的な考え方をお伝えします。
上場企業などは、半期に1度は在庫評価損を計上しなければなりません。
在庫評価損とは、一定期間経過し販売できない在庫を、帳簿上の資産価値が無いとみなし、一定のルールで定める本来の価値(非常に安価)との差額を損金としてP/L に計上するルールです。
したがって、在庫評価損を定期的に計上している企業は、在庫を一定の期間以上保有する前に売り切ろうとします。
また業界の在庫回転率が0.2~0.3/月であることを考えると、目標は最大でも90日以内に売ることとするのが妥当です。
つまり、在庫期間が90日を超えたものはできるだけ早く売るルールです。
したがって、在庫期間90日までは徐々に値下げし、90日を超えるものは赤字でも販売していくことになります。
「お勧めの値下げルール」
ここで、お勧めの値下げルールをお伝えします。
- 掲載開始から2週間経過し、問合せが少ない車両の分析を行う
- 3週目から若干の値引きをする
- 30日から60日以内に、利益が出る範囲の値下げを行い販売する
- 60日経過した車両は処分と決め、ロス額を最小限に抑えつつ販売する
- 90日以内に必ず売り切る
上記の様なルールを実行し、為替変動や車両相場のリスクヘッジを行うことをお勧めいたします。
この、掲載3週間、30日、60日、90日、それ以降、でどういうルールで値下げをしていくのかが非常に大切になります。
基本的にはシステマティックに値下げするルールを決め実施していくのが簡単ですが、値下げは個車ごとの状況が異なりますので、補助的に1台1台、相場を見ながら最終値下げ金額を決定していくことをお勧めします。
また、値下げの際には、CardealPage上でどう表示されるのか意識して行います。
CardealPage上で、ユーザーから閲覧され、かつ販売につながりやすいページを順に並べると
- 新規掲載車両(New Arrivalコーナー)
- Discount車両コーナー
- 車種リストページで上位に表示
となっております。
CardealPageの仕組みでは、20ドル以上値下げする場合はDiscount車両として上位表示されますので、1回の値下げ幅は20ドル以上になる様にします。
また車種リストページで上位に表示されている車両の価格を参考にし、可能であれば価格で3~5位以内に入るように調整します。
ただし、オークション相場も確認し、値下げし過ぎないように注意します。
「成約後に、なぜ売れたのか分析をする」
加盟店様から多くいただくご質問に、「この車はなぜ売れないのでしょうか?」というのがありますが、売れない理由を考えるよりも、「なぜ売れたのか」を分析する方がお勧めです。
売れた理由は、直接バイヤーに聞く事ができます。今後の仕入にも役立つ上、売れた理由を知ることで、相対的に「なぜ売れないのか」を分析する事もできます。
早く売れすぎた場合は、売価を低くつけすぎた可能性がありますが、早く売れるくらいで販売している方が在庫商売としては健全です。また、次回はもう少し高めに売価を設定してみるという余裕もでてくるかもしれません。
赤字で販売になった場合は、仕入れ時の想定売価が高いのかもしれませんし、その車のスペックや状態が悪いのかもしれません。
特に、いままで販売した事が無い車両を投入する場合は、安めに価格を値付けして、まず「いくらで売れるのか?」を確認してから次の仕入を行う方がいいでしょう。
以上の様に、在庫の値下げ、損切りルールを決め、確実に在庫回転をさせていくことで、総粗利を最大化することができます。
値下げ、処分ルールの日数の区切り方は各社色々あっても良いと思います。
いままで、在庫値下げの概念が無かった方は、一度掲載30日以内、60日以内、90日以上の在庫数、全在庫の在庫回転率をチェックし、不良在庫が溜まらない様にしてみるのはいかがでしょうか。