今回は、諸先輩方から教えていただいたお話と私たちの経験を元に、業界の変遷をご紹介したいと思います。
歴史を知れば、中古車輸出に対する理解が深まるかもしれません。
中古車輸出は、昔は驚くほど儲かった!?
筆者は、2002年から中古車輸出業界に入りました。
それ以前の事はあまり存じ上げませんが、お取引先の諸先輩方のお話を伺うと
・20年以上前の中古車輸出は、かなり儲かった
・どんな車でも台当たり10~20万円は儲かった
とお話されることが多く、当時は非常に景気が良かった様です。
現在の中古車輸出は、台当たり3万円以下か、売り方によって粗利率4%~10%程度の利益なので、そんなに儲かっていた頃を想像できませんよね。
今は、消費税より少ない利益になっています(笑)
何故、20年前に比べると1台あたりの利益が減ってしまったのか。
それは、「オークションの発展に伴う競争激化」が一番の要因ではないかと思われます。
オートオークションの出現で中古車流通が激変
オークション自体は、1967年にトヨタユーゼックが第1回を開催したと言われています。
その後1980年代に入って、それまでの手ゼリからPOSシステムを使ったセリに進化していきました。しかし私が輸出業界に入った2002年当時は、まだ中古車オークションは、あまり活発ではなかった印象です。
当時は、新車ディーラーや中古車業者が下取った車は、営業マンの「知り合いの業者」へ販売されていたようです。一部のディーラーの営業マンと業者の癒着もあったようで、「中古車相場」というものもあまり明確に無かったように思われます。
私も輸出向けの車両を仕入れるために、買取店やディーラーから電話で車両情報を聞き、FAX等で査定表をやりとりをしていた一方、オークションからの仕入れもしていました。ちょうど業者間取引からオークションへの過渡期だった様です。
買取店ビジネスは1989年にアップルが最初にスタートしたと言われています。その後、ガリバーインターナショナル(現IDOM)が1994年に参入し、ガリバーは買取店ビジネスのトップ企業に成長しました。
「ディーラーの下取りよりも高く買取ります」
買取店の出現により、当時はディーラーに下取りで出すのが常識だったところに、大きな流通改革が生まれた事になります。
特にガリバーのビジネスモデルは、全ての買い取った車両はオークションに出品することが徹底されていました。オークション相場を元に算出した買取価格で買い取った車を、相場が変わる前に素早くオークションで処分するのです。
ガリバーが大きくこのビジネスモデルで躍進した理由は、買取価格の正確性と素早い出品を全国でシステマティックに行なうようにできたこと、リソースを買取専門ビジネスに集中したことだと言えるでしょう。
このように、ガリバー、アップルの他にも、ラビット(USSグループ)やカーセブンなどが続々と買取店ビジネスに参入し、日本の個人ユーザーの手を離れた中古車は業者間取引からオークションに出品される様に流通が変化していきました。
また、トヨタ、日産、ホンダ等のディーラー系企業は、TAA、NAA、HAAという系列オークションに下取りした中古車を出品する流れを推し進め、日本の中古車は、オークションを中心に取引されるようになっていきました。
オークションへの出品台数が増える中、仕入れ側もオークションで仕入れるメリットがあります。
仕入れ側のメリットは、
・第3者視点での車両状態が開示されている
・過去の売買履歴が開示されている
・インターネットや衛星通信を利用し、遠隔からでも車両状態の確認や応札が可能
などが挙げられます。
これらのメリットと、前述の出品台数増加が合わさり、オークションが加速度的に浸透したのです。
オークションが発展してくると、中古車輸出業者の仕入れに対する難易度も下がってきました。
本来、特別な資格や技能が必要ではない中古車輸出への参入障壁はさらに下がり、多くの競合が乱立する時代に突入していくことになります。
オークションの発展により中古車輸出業界はどう変わったのか
前述の通り、オークションの発展により流通価格の透明さが増したのに加え、1998年ころからインターネットが爆発的に普及したことも、輸出業界を大きく変えた要因でした。
それまで海外バイヤーは、輸出業者がいくらで仕入れているかはわかりませんでした。そのため諸先輩方は1台10万~20万儲けられていたわけです。
それが、バイヤーが、オークションの出品車両情報や落札・流札結果を海外から見られるようになったために、大きな値下げ圧力になりました。
確かに、仕入れ価格が客先に開示されている商売って難しいですよね。
どの輸出業者から買っても、仕入れソースは同じオークションだとすれば、安いところから買おうというのが普通のバイヤー心理です。
そういった状況から、中古車輸出には、後述する「オークションオファー型」というビジネスモデルが誕生しました。
オークションオファー型は参入障壁が非常に低い為、輸出業者の競争が激しく利益もどんどん少なくなっていきました。
そんな環境でも、長年中古車輸出業界で戦っている輸出業者は、それぞれ戦略的に規模を拡大していきました。
次回は、中古車輸出のビジネスモデルを紐解いていくことにしましょう。
続きはこちら 3つのビジネスモデルで理解する輸出業界の勢力図