前回の記事 >> ECサイト運営型中古車輸出の先駆者、トラストとオートレック
トラストがECサイトをスタートしてから8年後の 2004年2月 に、国内向け中古車情報サービス会社のカービューが、中古車輸出サービスとしてトレードカービュー(https://www.tradecarview.com/)を開設しました。
売上:4億
セグメント利益:1.7億
※2014年3月期
※海外事業のみの数値
トレードカービューは、株式会社ヤフーの子会社である株式会社カービューが運営しています。
前述のトラストやオートレックは自社在庫を販売するモデルですが、トレードカービューは他社の在庫を掲載するサービスを始めたのです。
このモデルの良いところは
・全く輸出ビジネスをやったことがない初心者でもスタートできる
・資金量に関係なく、掲載在庫数を増やすことができる
です。
トラスト等の自社在庫販売業者は、資金上限や在庫保有リスクを考えるとそこまで多くの在庫を保有して販売することはできません。
しかしトレードカービューは、在庫を持っている加盟店を集めて掲載してもらうことで、 数万台の在庫を掲載する事ができるようになりました 。
海外バイヤーのメリットとしては、トレードカービューをみれば、複数の輸出業者のたくさんの在庫から選ぶことができ、当時は画期的なサービスでした。
カービューにとって自社の販売台数を伸ばすには、多くの輸出業者に掲載してもらうことが必要です。
そこでカービューは、独立・起業希望者に、セミナーで中古車輸出のやり方を教えるビジネスをスタートさせました。
また、カービューは2007年6月に東京証券取引所マザーズへ上場しましたが、その後2015年3月に、ヤフー株式会社の完全子会社化に伴い上場廃止しました。
その頃から、 ビジネススタイルを方向転換しはじめている 様に見えます。
トレードカービューとSafariの関係
加盟店の中に、 Safariという会社が出現 します。
設立:2016年
出資比率 :株式会社ジェイ・エー・エー 51%、株式会社カービュー 49%
※株式会社ジェイ・エー・エーは株式会社ユー・エス・エスの子会社となっており、
オートオークションのJAA東京とHAA神戸を運営しています。
この会社は別会社という体裁をとっていますが、Safariをトレードカービュー自らが運営していると考えると、いろいろ見えてくることがあります。
まず単純に、加盟店の在庫以外に、 自社の在庫も販売するスタイルを始めた と言えます。
例えるなら、今までは楽天スタイルだったのを、Amazonのようなスタイルへ変更したことになります。
次に、 海外バイヤー向けオークション買付けサービスをスタート しています。
前述のJAA東京やHAA神戸などのオークション出品車両を買付けできるサービスです。
画面上には、各車両ごとの想定FOB価格が表示され、FOB価格は、想定落札価格+輸出経費で計算されており、この金額を 事前にデポジットすれば応札に参加することができます 。
晴れてオークションから買い付けたら、船賃を含める残りの代金を3日以内に支払い、トレードカービューに全額着金してから、Safariが出港させます。
もし回収できなくても、オークション落札価格+輸出経費をもらっているので、そのままオークションで処分してもロスが出ないという仕組みです。
このオークション買付けサービスを始める為に、Safariを始めたという捉え方もできます。
タンザニアからアクセスした際のトレードカービュー(2017年)
トレードカービューの加盟店は、Safariを不安視している?
当社の加盟店様には、トレードカービューにも掲載している方が多くいらっしゃいます。
その加盟店様からよく耳にするのは、 トレードカービューに掲載している自社の在庫とSafariの在庫が競合するから困る というものです。
確かに、同じサイト内の在庫は、海外バイヤーにとって簡単に比較の対象になりますね。
なぜ、トレードカービューがSafariを始めたのか
ここからは完全に憶測になりますので、あくまでも筆者の考えとしてお話しします。
トレードカービューがこのビジネスに参入した2004年当時と比べると、中古車のECサイト販売ビジネスには大きな変化が訪れました。
それは ビィ・フォアードの台頭 です。
ビィ・フォアードについては、後ほど詳しくお話しますが、2004年当時、トラストの有価証券報告書を確認したり、各社の販売価格を調査すると、 1台あたりの粗利(台粗利)は10万円を超えるビジネス でした。
それがビィ・フォアードが出現してから今日に至るまで、台粗利はどんどん下がってきています。
特に CIF 2,000ドル以下の車は、ビィ・フォアードでさえも、大量の物流からもたらさられるコストの低減分を考えても、台粗利20,000円以下 になっていると思われます。
したがって、この低価格帯の車両は、ビィ・フォアード程の仕組みを持たない加盟店が価格的に勝負できなくなってきているのではないかと思われます。
しかし、トレードカービューの様な大規模なサイトを運営していると、低単価の車を求める海外バイヤーが多く訪れます。
せっかく 広告コストを掛けて呼んできた海外バイヤーも、売れる車がなければ成約しません 。
成約しなければ意味がないので、 トレードカービューも取りこぼさない様に、Safariの在庫でなんとか販売しようとしている のではないでしょうか。
また、トレードカービュー規模になると、過去の販売車両のデータが大量にあるので、どの車がいくらで売れるのかという情報を持っています。
しかし、実際にサイトに掲載される車種や売価は加盟店任せなので、海外バイヤーのニーズと加盟店の掲載在庫にギャップが生じることがあります。
そういった、いわば 欠品状態になってしまっている車をSafariとして在庫する ことにより、前述の低単価車両と合わせて サイト全体の成約率をあげようとしている と考えられるのではないでしょうか。
実際、Safariの在庫を調査してみると、販売価格が安い車両が多いです。
そういう意味では、確かに低単価の車両を販売している加盟店の在庫とは競合し、加盟店の販売台数が減ってしまう恐れがあるかもしれません。
Safariの在庫を使って、低単価車両や欠品車両の成約台数を増やし、トレードカービューというサイトから購入するバイヤーを増やします。
その結果、リピート購入のバイヤーが、次回は加盟店の在庫を買うかもしれません。
したがって加盟店にとっての、 Safariの存在は短期的な脅威として見るのではなく、トレードカービューというサイトを繁栄させるためには必要な打ち手である とも考えられます。
最初にお話した通り、これらは筆者の憶測です。
トレードカービューが本当は何を狙っているのかは、今後のSafariの掲載台数や取扱車種がどの様に推移していくか、掲載店への手数料体系がどの様に変化していくのかをみれば、わかってくるでしょう。
そういう観点で見ていくと面白いかもしれません。
トレードカービューで起業・独立はできるのか
前述の通り、トレードカービューは、脱サラして中古車輸出で起業しようと思っている人のサポートをしています。
当社カーディールページにも、独立したい方からの問合せをいただくことがあります。
その際にお伝えしているのは、以前の記事でも書いた通り、必要なリソースが揃っているかどうかです。
参考>> 中古車輸出で起業・開業する為に最低必要な3つのこと
これら3つの条件が揃わないと、カーディールページでも、トレードカービューでも、独立・企業するのは難易度が高いと思われます。
中古車輸出サイトを運営する主な企業
ここまでお話したトラストやオートレック以外に、各社のサイトビジネス参入タイミングをまとめると以下の様になります。
トラスト | 1996年8月サイト開設 | http://www.japanesevehicles.com/ |
オートレック | 1997年8月サイト開設 | http://www.autorec.co.jp/ |
トレードカービュー | 2004年2月サイト開設 | https://www.tradecarview.com/ |
この3社がECサイト販売型の礎をつくってきました。
上記以外にも、様々な企業がECサイトビジネスに参入しました。
その後筆者が在籍していた企業も参入します。
アガスタ | 2006年12月販売サイト開設 | https://www.picknbuy24.com/ |
また、以下の2社は、最初はトレードカービューの加盟店としてスタートしましたが、販売台数の増加に伴い自社サイトを開設しました。
ヤナギサワ自動車販売 | 2009年 トレードカービュー加盟 | |
2010年 サイト開設 | http://www.realmotor.jp/ |
ビィ・フォワード | 2006年 トレードカービュー加盟 | |
2007年 サイト開設 | https://www.beforward.jp/ |
こうして、現在も続くECサイト型運営型企業は、サイト開設後、販売台数を伸ばして行きます。
そんな中2008年9月にはリーマンショックが起こり、中古車輸出にも大きな打撃をもたらしました。
しかしその リーマンショック前後から、ECサイト販売ビジネスで、ビィ・フォアードが急激に台頭 してくることになります。
次回は、ビィ・フォアードの台頭とについてお話しします。
続きはこちら>> ビィ・フォアード(Be Forward)は、なぜ大成功したのか